映画の紹介をします。
一つ目はイタリア映画の「Maladolescenza」(1976)です。日本でも上映された時期があったようで、「思春の森」という邦題が付いています。原題の意味は「悪の思春期」というような造語です。
Wikipediaでは、malad(病気の)とadolescenza(思春期)の掛け言葉だと説明されています。
ストーリーは、あるような無いようなもので、紹介するに及びません。十四歳くらいに見える女子二人と男子一人(Wikipediaによると、女優は十二歳)の、森を舞台とした幻想的な、しかし複雑な関係を描いたものです。
一人の女子が、他の二人に虐められるようになっていきますが、その子がおしっこをさせられたり、他の二人が全裸で抱き合ったりするシーンがあります。
同じことをその年頃に自分もしたかった、と強く思わせられる迫力があります。
この時代のイタリア映画は、露骨に少女や少年の裸体を映しているものがたくさんあり、現在では上映はおろか、動画としても上げられないレベルでしょう。
この、意地悪な方の女の子の役をやった女優は、エヴァ=イオネスコという有名人ですが、後年、子供の時に母親によって映画にヌード出演させられたことについて、母親を訴え、裁判で勝利したと、読んだことがあります。
動画に上げられないイタリア映画と書きましたが、この作品は、YouTubeで検索すると、ヒットする場合があります。日本語字幕はありませんが。
詩的な作品として、忘れられないものです。
奇妙なことに、映画の音楽は今でも販売されています。
もう一つは、「Dream Child (邦題も『ドリームチャイルド』(1985年)」です。「不思議の国のアリス」のモデルであった実在したアリスが老人となってからの話であり、痴呆の症状なのか、ルイス=キャロル(ドジソン)の思い出がトラウマのように彼女を襲うシーンが出てきます。
その思い出の中で、少女時代のアリスとドジソンとの交流が描かれる一方、現実では、イギリス流の頑固婆さんと化した老人のアリスが、これまたイギリス的な、純真で礼儀正しい若い女の子の付き人に(養女?)に辛く当たる様子が描かれます。
彼女たちが、開放的なアメリカに渡った間の出来事と並行して、少女時代のシーンも現れるという二重の作りになっています。
大抵、映画化された「不思議の国のアリス」のアリス役はなぜかあまり美しくないのですが、この映画は違います。
イギリス英語を話す美しいアリスと、いかにも小児性愛者だという臆病で緊張したドジソンのシーンが出てくると、もちろんドジソンに感情移入してしまいます。
老婆のアリスに仕えている若い女の子も、体つきは高校生くらいに見えますが、態度も顔も可愛らしいので、目が離せません。
何十年も長く会わずにいる友人は、思い出の中の姿で自分に想起されますが、いざ会ってみると、その相貌の変化した様に、打ちのめされるほど驚く事があります。
想起される過去の人物は、実は現実とは別に生きているのではないかと、ふと考える気になる作品です。