小児性愛者という存在は、その性質だけ知って、一人一人の顔を知らない場合、不気味なものです。小児性愛という特性は人格のほんの一部に過ぎないのですが、「小児性愛者」という概念は、まさにその部分のみで人間集団を括っているからです。
そんな人間は実在しません。
例えば、「はげ」という概念があり、そういう特徴のある人はいる訳ですが、そういう人たちに、何か「種」のような、全体的に共通した特性があるのでないことと、これは同じです。
但し、小児性愛のほうは心理的なものであるため、行動や感性において共通する点が、「はげ」よりは多いでしょう。
それでも、狂信的思想を持つグループであったり、異なる生物であったりするような同一性は、小児性愛者間には存在しません。
そもそも、性的逸脱の中でも、小児性愛者は、対象が自分たちの外にあるので、ホモセクシャルなどと異なり、仲間を作りにくいのです。
いわゆる陰謀論というのは、何かを不気味だと感じている人のその不安につけ込んで、その不安に基けば実在しそうな風説のことです。
国際的な小児性愛者のグループが存在するとか、それが子供を誘拐しているとか、子供の臓器を取り出して販売しているとか、カトリックが組織的に関係しているだとか、自分たちの知らない所で何かが行われている話になっています。
こういう不信や不安からくる幻想は、行き着く先に限りがないものです。宇宙人が出てきたり、悪魔が出てきたりします。
中世ヨーロッパの魔女狩りも、同じ現象でした。関東大震災の時も、朝鮮人に対する風説から、酷い虐待が起こったと言います。
現代では、情報技術や映像技術の発達により、却って事実か嘘かが判別できないようになっています。かつては発信側が限られており、それしか信じられるものがない偏った提供のされ方だったとも言えるのですが、現在では誰もが発信できて、公的なものも信頼できないようになっています。
結局のところは、何事も鵜呑みにせず、さまざまな可能性を検討しながら自分で判断するほかないのだと思います。